【危険度】
●チッタゴン(チョットグラム)丘陵地帯(カグラチャリ県、ランガマティ県、バンドルボン県)
レベル2:不要不急の渡航は止めてください。(継続)
●上記を除くバングラデシュ全土
レベル1:十分注意してください。(継続)
【ポイント】
●バングラデシュでは、2019年から2020年にかけて治安当局を標的とする爆弾テロが散発的に発生したほか、2023年にはバングラデシュを拠点とする新たな過激派組織が確認されるなど、依然としてテロの脅威が排除されていません。
●政権与党に対するデモ・抗議活動も多く確認され、2022年12月にはダッカ市内で警察と最大野党であるバングラデシュ民族主義党(BNP)の活動家らが衝突し、複数の死傷者が発生しました。また、2024年1月に実施された総選挙に至る過程においても、野党による抗議活動が行われ、死傷者を伴う暴力が発生しました。総選挙後の情勢は概ね落ちついているものの、野党による抗議活動などの可能性もあり、引き続き治安情勢には十分注意が必要です。
●チッタゴン(チョットグラム)丘陵地帯では、仏教系少数民族が多数居住していますが、民族対立等が依然として未解決です。バングラデシュ治安部隊によるチッタゴン丘陵地帯でのテロ掃討作戦のため、ミャンマー国境の一部で渡航制限が継続されるなど、治安情勢が不安な状態が続いており、引き続き警戒する必要がありますので、同地帯への不要不急の渡航は止めてください。
1 概況
(1)政治情勢
ア 2021年3月にはインドのモディ首相訪問に対し、イスラム主義団体「ヘファジャテ・イスラム」が全国規模の抗議活動及びハルタル(大規模ストライキ)を実施し、同活動参加者と治安部隊の間で衝突が発生し、双方に複数の負傷者が出ました。また、2022年6月にはインド与党であるインド人民党(BJP)幹部による預言者ムハンマドに対する発言をめぐり、ダッカ市内で抗議集会が行われました。
イ このほか、2022年12月、ダッカ市内で警察と最大野党であるBNPの活動家らが衝突し、男性1名が死亡、ジャーナリスト4名を含む50名以上が負傷しました。
ウ 2024年1月の第12次総選挙では、選挙前に野党による政権与党への抗議活動や反政府運動が連日のように行われ、死傷者を伴う暴力が発生しました。選挙後の政治情勢は概ね平穏裏に推移していますが、今後野党が再選挙を要求する抗議活動を行う可能性は十分にあり、引き続き治安情勢を注視していく必要があります。
(2)テロ情勢
ア 過去、国内各地で外国人、イスラム教スンニ派以外の宗教信者、治安当局関係者等が標的となるテロ事件が相次いで発生しており、2015年10月には、ロングプール県における邦人殺害事件、2016年7月には武装グループが人質を取って籠城し、日本人7名を含む20名以上が殺害されるダッカ襲撃テロ事件が発生しました。邦人が被害となった両事件に関しては、「ISILバングラデシュ」を名乗る犯行声明が発出され、2019年に発生した警察官を狙った爆弾事件に関しても、同様の犯行声明が発出されました。
イ 2016年以降、バングラデシュ政府は、テロ計画を有するイスラム過激主義者らの摘発を継続的に推進し、テロを未然に阻止しています。2016年以降、外国人を標的としたテロ事件は発生していませんが、過激派組織の拠点から爆弾や爆弾の原材料等が押収される事案は現在も生じています。2023年中、バングラデシュを拠点とする新たな過激派組織2団体が確認されており、今後もテロ情勢を注視していく必要があります。
詳細は、バングラデシュの「テロ・誘拐情勢」も、あわせてご確認ください。
具体的には以下の点に留意してください。
[行動]
●予定を多くの人に知られないようにし、目立たないように行動する。
●通勤や買い物等を同じ経路や時間帯で行わず、日常の行動パターンをできるだけ固定しないようにする。
●外出時の移動は車両を利用する。
●早朝・夜間の外出、移動は控え、日中の時間帯に用事を済ませる。
●車両駐車時、特に車両昇降時には、車両に不審者や不審車両(バイク等を含む)が近づいていないか、周囲の状況を慎重に確認する。
[訪問場所]
●最新の治安情勢について情報収集に努め、滞在先や個別の訪問先の治安状況や警備体制を常に確認する。
●テロの標的となりやすい場所(外国人が多く集まるレストラン、欧米関連施設、政府施設、公共交通機関、観光施設、宗教施設、警察署、ショッピングモール、公立学校や市場など)への訪問を控える。これらの場所を訪問する必要がある場合には、滞在時間を短くする、避難経路を確認しておく等の安全対策を必ず講じる。また、周囲の状況には常に注意を払い、不審な状況を察知したら、速やかにその場を離れる。
[時期等]
●宗教行事、季節的な行事や大規模イベントの際は、不要不急の外出は控える。
●イスラム教では、金曜日が集団礼拝の日とされており、その機会を利用してテロや襲撃が行われることがあるので、モスク等の宗教施設などテロの標的となりやすい場所には極力近づかない。
(3)一般犯罪
全土において、犯罪発生件数は年々増加しており、特に、ここ数年で薬物事案が急激に増加しています。一方、2016年以降、警察の検挙率も急速に伸びており、治安当局の取組は成果を上げていますが、依然として、誘拐、殺人、強盗等の凶悪犯罪が多発しており、邦人旅行者や出張者などの短期滞在者が人的被害を受ける例も確認されています。
2 地域別情勢
(1)チッタゴン(チョットグラム)丘陵地帯(カグラチャリ県、ランガマティ県、バンドルボン県)
レベル2:不要不急の渡航は止めてください。(継続)
ア 南東部のインド及びミャンマーと国境を接するチッタゴン丘陵地帯には、仏教系少数民族が100万人以上居住しています。自治権要求等の背景から反政府組織が結成され、多くの死傷者を出す抗争が度々発生しましたが、1997年に「チッタゴン丘陸地帯和平協定」が締結されて以降、同抗争は沈静化しました。一方、民族対立等は依然として未解決であり、現地の治安情勢は不透明な状況が続いていますので、引き続き警戒する必要があります。
イ 2019年3月、ランガマティ地区で、待ち伏せしていた武装集団が、投票所から投票箱を運んでいた乗用車2台に発砲し、少なくとも7名が死亡、15名が負傷する事案が発生しました。このほか、2022年7月頃には、ミャンマー側の国境地帯において、ミャンマー軍と反政府武装組織であるアラカン軍(AA)との戦闘が激化し、ミャンマー側から砲弾が国境を越えてバングラデシュ国内に着弾した模様です。
つきましては、これら地域への不要不急の渡航は止めてください。やむを得ず渡航する場合には特別な注意を払うとともに十分な安全対策をとってください。
(2)上記を除くバングラデシュ全土
レベル1:十分注意してください。(継続)
ア ダッカ管区
(ア) 1(1)で述べているとおり、政治情勢に伴う衝突の多くがダッカ市内で発生し、死傷者が生じました。
(イ) 首都圏を中心とするダッカ管区においては、治安当局による過激主義者に対する摘発が強力に推進されており、こうした状況に不満を募らせた過激主義者によって、2017年にダッカ国際空港付近及び独立記念博物館周辺で自爆テロが発生したほか、2019年、ダッカ市内において警察官を狙った爆弾事件が複数件発生しましたが、いずれも粗悪な手製爆弾による犯行であったため、死者を伴う被害は出ていません。その後ダッカ管区において邦人が被害となるテロ関連事件は発生していませんが、今後も類似の事件が発生する可能性が排除できないため、市内を移動する際、警察官詰所や検問所付近を通過する際には十分な注意が必要です。
イ ダッカ管区を除く地域
(ア) 2024年1月に第12次総選挙が実施され、最大野党BNPが選挙をボイコットするなか、与党アワミ連盟が勝利を収めました。選挙前には野党による政権与党への抗議活動や反政府運動が全国的に行われましたが、選挙後は平穏を取り戻しています。しかし、野党による抗議活動は今後も続く可能性が十分にあることから、引き続き、注意が必要です。
(イ)テロ関連では、2018年に世俗化に影響力を有する著名人が殺害される事件が2件発生しましたが、これ以降、死者を伴うテロ事件は発生していません。一方で、2019年から2020年2月末まで、警察官を狙った爆弾事件が散発的に全土で発生し、警察官及び市民数名に負傷者が出ています。
つきましては、これらの地域へ渡航・滞在に当たっては、現地事情に関する最新の情報を入手するなどし、危険を避けるよう十分注意してください。
3 渡航・滞在に当たっての注意
(1)渡航者全般向けの注意事項
滞在中は以下の情報及び注意事項に留意の上、危険を避けるようにしてください。また、バングラデシュの「安全対策基礎データ」
もご一読の上、日本国外務省、在バングラデシュ日本国大使館、現地関係機関、テレビなど各種報道等から最新の情報を入手するよう努めてください。
万一、事件・事故に巻き込まれた、緊急事態が発生した、又は発生しそうな場合には、安否確認、緊急時の連絡などに必要ですので、以下(2)のとおり、在留届の提出または「たびレジ」への登録をお願いします。
ア 抗議活動に対する注意
抗議活動参加者が道路を封鎖したり、投石したりすることがあります。抗議活動には近づかず、また、デモが行われる場所が事前に分かる場合は同場所への立ち入りを控えてください。不自然な渋滞に遭遇した場合には迂回する等の措置を講じ、巻き込まれてしまった場合は、警察や家族、所属組織関係者と密に連絡をとるとともに、身の安全を最優先に行動してください。
イ テロ等に対する注意
テロに対する警戒が必要であることを認識し、外務省が発出する海外安全情報及び報道等により、治安情勢等、渡航・滞在先について最新の関連情報の入手に努めるとともに、改めて危機管理意識を持つよう努めてください。テロ、誘拐等の不測の事態に巻き込まれることのないよう、特にイスラム過激派の標的となりやすい場所(上記「1(2)テロ情勢」で指摘した場所)を訪れる際には、周囲の状況に注意を払い、不審な人物や状況を察知したら速やかにその場を離れる等、安全対策を講じてください。また、以下も併せご参照ください。
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