1 中国は2014 年に「反スパイ法」(反間諜法)を制定し、2023 年 4 月には同法が改訂されました。また、2024年5月には中国国内の機関や企業による国家秘密の管理徹底を目的とした国家秘密保護法の改正も行われました。2014年以降、これまでに17名の邦人が「国家安全」に関する罪により中国当局に拘束されたことが確認されており、現在も5名の邦人が拘束されています。
2 中国では、「国家安全に危害を与える」とされる行為は、「刑法」、「反スパイ法」の他、「軍事施設保護法」、「測量法」等に違反する行為とされ、拘束や刑罰の対象となる可能性があります。また、裁判で有罪となれば、懲役等の厳しい刑罰を科されるおそれがあります。
3 つきましては、特に以下の諸点についてご注意の上、中国側からいわゆるスパイ行為をしているとみなされるリスクを低減するよう努めてください。ご不安な点等ありましたら、迷うことなく最寄りの在中国各公館又は外務本省までご相談ください(連絡先は下記ご参照。)。
(1)中国の刑法第 110 条、反スパイ法第 4 条第 2 号では、「スパイ組織に参加する」、「スパイ組織及びその代理人の任務を引き受ける」といった行為が「スパイ行為」に当たるなどとして処罰等の対象とされています。中国で発行されている反スパイ法の解説書(「中華人民共和国反間諜法釈義」)によれば、「スパイ組織」とは「外国政府若しくは国外の敵対勢力が設立する、我が国の政治、経済、軍事等の面における国家秘密、インテリジェンス等の情報を収集し、若しくは我が国に対して転覆、破壊等の活動を行い、我が国の国家安全と利益に危害を及ぼすことを主な任務とする組織を指す」とされています。また、「スパイ組織」の「資金援助」を受けて行う活動もスパイ行為に該当するとされています。
(2)中国政府の国家秘密、インテリジェンス等を持ち出したり、国外の組織にそれらを提供したりするのみならず、国家秘密、インテリジェンス等に該当するとされる情報(文書、データ等を含む)を何らかの手段で取得、保有しただけで、「スパイ行為」とみなされ、厳罰に処されるおそれがあります。
(3)「軍事禁区」や「軍事管理区」と表示された場所は、軍事施設保護法により、許可のない立ち入りや撮影等が禁止されていますので、特に注意する必要があります。
(4)無許可のまま国土調査等を行うことは違法とされています。GPSを用いた測量、温泉掘削等の地質調査、生態調査、考古学調査等に従事して地理情報を収集、取得、所有等をした場合も、「国家安全に危害を及ぼす」として国家安全当局に拘束される可能性があります。(手書きのものを含む)地図を所持するだけで、その対象とみなされる可能性があります。
(5)「統計法」では外国人による無許可の統計調査も禁止されており、学術的なサンプル調査(アンケート用紙配布等)を実施する場合等でも、調査行為が法律に抵触することがありますので、共同調査を実施する中国側機関(学校等)との十分な打合わせが必要です。活動内容が「調査」や「情報収集」に該当する可能性がある場合には、細心の注意が必要です。
(6)上記の各行為については、最近の行為(直近の中国滞在時の行為)のみならず、過去の行為(以前の中国滞在時の行為や中国以外での行為等)についても調査等の対象になり得ることに注意する必要があります。
4 詳細は、外務省海外安全ホームページの中国「危険情報(1概況(5)」、また、「安全対策基礎データ」の「滞在時の留意事項(10 いわゆる「スパイ行為」等)」及び在中国日本国大使館の「安全の手引き(2.(6)いわゆる「スパイ行為」等)に掲載していますので、改めてご確認をお願いいたします。
●スパイ行為やその他違法活動とみなされる可能性がある行為の例
(https://www.anzen.mofa.go.jp/china_spy1/china_spy1.pdf )
●改訂「反スパイ法」におけるスパイ行為の定義
(https://www.anzen.mofa.go.jp/china_spy2/china_spy2.pdf )
●中国国家安全部が公表しているスパイ事案摘発等の例
(https://www.anzen.mofa.go.jp/china_spy3/china_spy3.pdf )